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2026年8月17日

「幸せ」は科学できる!?幸福感を生み出す脳のメカニズムと、毎日の幸福度を上げる科学的方法

「幸せ」は科学できる!?幸福感を生み出す脳のメカニズムと、毎日の幸福度を上げる科学的方法
ヤーモリ
見てくれイーモリ!あの地球人の男性、仕事帰りなのにすごく疲れた顔をしているのに……公園に着いた途端、急に走り始めたぞ!?あれは何かに追われているのか?
イーモリ
追われてはいない。彼は「幸せ」を追っているんだ。走ることで脳内に幸福物質を分泌させようとしている。
ヤーモリ
幸せを追う!?走ることで幸せになれるのか!?地球人の「幸せ」って一体何なんだ?
イーモリ
実は「幸せとは何か」は、脳科学や心理学の分野で長年研究されてきた大きなテーマだ。日経サイエンス2026年4月号でも「幸福とは何か」という特集が組まれていて、「静かな脳」が幸福感を生み出すという神経基盤の話や、日本人の幸福度が低い理由なども取り上げられている。今わかっていることを解説しよう。
ヤーモリ
ほほう!脳科学で「幸せの正体」がわかるのか!?それは聞かなければ!
イーモリ
幸福感には4つの重要な脳内物質が関わっている。ドーパミン、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィンだ。これらは俗に「幸せの4大ホルモン」と呼ばれることがある。厳密にはドーパミン、セロトニン、エンドルフィンは主に神経伝達物質だけどね。
ヤーモリ
4種類も!?幸せって意外と複雑な製造工程なんだな……ロケットのエンジンより部品が多いじゃないか!
イーモリ
それぞれ役割が違う。ドーパミンは目標達成時の「やった!」という快感。セロトニンは穏やかで安心した「落ち着き」の幸福感。オキシトシンは人とつながる「あたたかさ」。エンドルフィンは苦しみを乗り越えた時の「高揚感」だ。
ヤーモリ
なるほど!「よっしゃー!」も「ほっ……」も「あたたかい……」も「ヒャッハー!」も、全部ちがう幸せなのか!地球人は複雑な生き物だな!
イーモリ
そうだ。そして今のあの男性が走っているのは、まさに運動由来の幸福物質を出すためだ。激しい運動後に「ランナーズハイ」と呼ばれる高揚感が起きることは有名だが、かつて主因とされていたエンドルフィンに代わり、最新研究ではむしろ内因性大麻物質(エンドカンナビノイド)が主役だと考えられている。オピオイド受容体を遮断しても高揚感が生じることが確認されたんだ。
ヤーモリ
エンドカンナビノ……!?脳の中に大麻みたいな物質が!?地球人の脳、すごすぎる……!
イーモリ
心配しなくていい。内因性なので自然な快感調節物質だ。それより重要なのは、幸福感のうち意図的な行動で高められる部分があるということだ。リュボミルスキーらの2005年のモデルでは遺伝50%・環境10%・意図的行動40%と推定された。この比率は著者自身が後に単純すぎると修正しているが、意図的な行動で幸福感を高められるという基本的な考え方は支持されている。
ヤーモリ
自分の行動で変えられる部分があるんだな!それは希望の光だ!!では何をすれば幸せになれるんだ!?
イーモリ
ポジティブ心理学の第一人者マーティン・セリグマン博士は「幸福」を5つの要素で説明している。P(ポジティブ感情)、E(没頭・エンゲージメント)、R(人間関係)、M(意味・目的)、A(達成感)だ。これを「PERMA理論」という。
ヤーモリ
PERMA!なんかゲームの必殺技みたいだ!「パーマ発動!」……使い方が違うか。
イーモリ
使い方は違うが考え方は悪くない。5つのうちどれかが欠けると幸福感が下がる。セリグマン自身はこの5要素に優劣をつけていないが、別の研究で特に重要とされているのが「R=人間関係」だ。ハーバードが85年以上にわたって続けている「ハーバード成人発達研究」では、経済状況でも地位でも名声でもなく、人間関係の「質」が幸福と健康と長寿を最もよく予測したんだ。
ヤーモリ
えっ、お金や地位より人間関係の方が大事なのか!?85年分のデータで示されてるなんて……じゃあ宇宙最大の富豪でも孤独だったら不幸ってことか……奥が深いな、地球人の幸せって!
イーモリ
そこに関わるのが「快楽的適応」という脳の現象だ。どんな喜びも、慣れてしまうと喜びを感じにくくなる。たとえばBrickmanらの1978年の有名な研究では、宝くじ当選者の幸福度が非当選者と大差なかったことが報告されている。ただしこれは横断研究で「当選前に比べて下がった」ことを示したわけではなく、近年のスウェーデンの大規模縦断研究(Lindqvist et al., 2020)では高額当選が長期的に生活満足度を上げるという結果も出ている。
ヤーモリ
ギョエーッ!!どっちなんだ!?当たった方がいいのか、よくないのか……!でも逆に言えば、不幸なことにも慣れるということか?
イーモリ
その通り。脳の適応力は両刃の剣だ。ただこの「慣れ」に対抗する方法がある。リュボミルスキー博士が著書『The How of Happiness』で紹介しているように、「新しい体験」や「感謝の習慣」を意識的に取り入れることで、脳の適応を遅らせることができるんだ。
ヤーモリ
ふむふむ……「感謝」か。シンプルだけど大事そうだな!
イーモリ
重要だからね。さらにVan BovenとGilovichの研究では、「体験」にお金を使う人は「モノ」にお金を使う人より長く幸せを感じることが示されている。旅行、食事、習い事などだ。
ヤーモリ
体験!!「豪華なモノ」より「地球人との食事体験」の方が幸せが長持ちするわけか……。なるほどな!!
イーモリ
話を戻そう。脳科学的に見ると、セロトニンを増やす最も手軽な方法は「朝の日光浴」だ。Lambertらの2002年のLancet誌の研究では、日光の量が多い日ほど脳内のセロトニン代謝回転が高いことが示されている。網膜から光が入ると松果体でのメラトニン分泌が抑制され、同時に脳幹の縫線核でセロトニンの活動が高まると考えられているんだ。
ヤーモリ
つまり朝、太陽の光を浴びるだけで脳が幸せ物質を作り始めるのか!?地球人にとって太陽は最強の幸せマシンじゃないか!
イーモリ
また、Hölzelらの2011年の研究では、8週間のマインドフルネス瞑想プログラムの後、左海馬や後帯状皮質など複数の領域で灰白質密度の増加が見られた。ただしこれは16名という小規模な研究なので、大規模な追試が待たれるところだ。
ヤーモリ
8週間!たった2ヶ月で脳に変化が見られるのか!!地球人の脳は本当に柔軟だ……宇宙人の脳も負けてられないぞ!
イーモリ
まとめると、幸福感を高める科学的な裏づけがある行動としては、①運動(ランナーズハイのような一過性の効果に加え、習慣的な運動は気分を改善する)、②朝の日光浴、③感謝を書き出す習慣(Emmons & McCulloughの研究では週に1回、感謝していることを5つ書き出すだけで幸福感が向上した)、④良質な人間関係への投資、⑤意味のある目標への取り組み、⑥モノより体験にお金を使うこと、⑦マインドフルネス実践が挙げられる。
ヤーモリ
お、おお……それ、特別な装置も資格もいらないものばかりだ!!地球人はとんでもなく豊かな幸せ製造装置を持っていたのか……!!
イーモリ
そうだ。幸せは「手に入れるもの」ではなく「育てるもの」なんだ。……ところで、あの男性、走り終えて公園のベンチで友人と話しているな。顔がさっきとは別人のように輝いている。
ヤーモリ
ほんとだ……!汗だくで疲れてるはずなのに、なんて良い顔してるんだ。運動+つながりで幸せ物質が一気に噴出したんだな!!
イーモリ
PERMA理論でいえば、走っている間にE(没頭)が満たされ、今こうして友人と話すことでR(人間関係)も満たされている状態だ。今頃、彼の脳内ではドーパミン、エンドルフィン、オキシトシンが同時に放出されているだろう。
ヤーモリ
なんて贅沢な脳内カクテルだ……!「幸せカクテル」!今日の調査レポートのタイトルはこれでいこう!!
イーモリ
(センスはさておき……)地球人の幸福研究は奥が深い。今後も注目し続ける価値がある。では本日の調査を終了しよう。

📚 参考文献

  1. Lyubomirsky, S., Sheldon, K. M., & Schkade, D. (2005). Pursuing happiness: The architecture of sustainable change. Review of General Psychology, 9(2), 111–131. DOI
  2. Seligman, M. E. P. (2011). Flourish: A visionary new understanding of happiness and well-being. Free Press.
  3. Siebers, M., Biedermann, S. V., Bindila, L., Lutz, B., & Fuss, J. (2021). Exercise-induced euphoria and anxiolysis do not depend on endogenous opioids in humans. Psychoneuroendocrinology, 126, 105173. DOI
  4. Lyubomirsky, S. (2008). The how of happiness: A scientific approach to getting the life you want. Penguin Press.
  5. Waldinger, R. J., & Schulz, M. S. (2023). The good life: Lessons from the world’s longest study on happiness. Simon & Schuster.
  6. Brickman, P., Coates, D., & Janoff-Bulman, R. (1978). Lottery winners and accident victims: Is happiness relative? Journal of Personality and Social Psychology, 36(8), 917–927. DOI
  7. Emmons, R. A., & McCullough, M. E. (2003). Counting blessings versus burdens. Journal of Personality and Social Psychology, 84(2), 377–389. DOI
  8. Van Boven, L., & Gilovich, T. (2003). To do or to have? That is the question. Journal of Personality and Social Psychology, 85(6), 1193–1202. DOI
  9. Lambert, G. W., et al. (2002). Effect of sunlight and season on serotonin turnover in the brain. The Lancet, 360(9348), 1840–1842. DOI
  10. 日経サイエンス編集部 (2026). 特集:幸福とは何か. 日経サイエンス, 2026年4月号.
  11. Lindqvist, E., Östling, R., & Cesarini, D. (2020). Long-run effects of lottery wealth on psychological well-being. Review of Economic Studies, 87(6), 2703–2726. DOI
  12. Hölzel, B. K., et al. (2011). Mindfulness practice leads to increases in regional brain gray matter density. Psychiatry Research: Neuroimaging, 191(1), 36–43. DOI

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