イーモリ、見てくれよ。あの地球人、毎朝あのネバネバした謎の物体を食べてるぞ…。見るだけで顎がムズムズするんだが。
あれは「納豆」という発酵食品だね。大豆を納豆菌で発酵させたものだよ。
なっとう? 糸引いてるのが気持ち悪すぎるんだが…。パンケーキの方が百億倍美味いだろ!
まあ好みは人それぞれだけど、今日はちょっとすごい話があるんだ。あの納豆に含まれている「ある栄養素」が、脳の神経細胞を守る「盾」になっているかもしれないっていう最新の研究が出てきたんだよ。
脳を守る!? あのネバネバが!? 嘘だろ!?
その栄養素というのが「ビタミンK」なんだ。
ビタミン…K? AとかCとかは聞いたことあるけど、Kってマイナーじゃないか?
確かに地味な存在だよね。ビタミンKはもともと「血を止める」ビタミンとして知られていたんだ。ドイツ語で凝固を意味する「Koagulation」の頭文字が名前の由来だよ。でもね、最近の研究で血液凝固とは全く別の、脳の神経細胞を守る驚きの力があることがわかったんだ。
「血を止める」と「脳を守る」って全然違うじゃないか。一体どうやって?
鍵になるのが「フェロトーシス」と呼ばれる細胞死なんだ。
フェロトー…シス? また呪文みたいな名前だな。
「フェロ」はラテン語で「鉄」、「トーシス」は「死」。つまり「鉄による死」、わかりやすく言うと脳細胞の「錆び死に」だね。脳の神経細胞の細胞膜を構成している脂質が、鉄の存在下で酸化されて壊れてしまうんだ。
脳が錆びる!? ガーン! でも鉄って…レバーとかほうれん草に入ってる、あの鉄分のこと?
そう、あの鉄だよ。鉄は体に必要なミネラルだけど、コントロールを失って暴走すると脂質を酸化させる「触媒」になる。実は脳の乾燥重量の約60%は脂質なんだ。だからこそフェロトーシスの標的になりやすい。そして近年、アルツハイマー病やパーキンソン病にこのフェロトーシスが深く関わっていることがわかってきたんだよ。
脳の6割が脂肪!? そしてそれが錆びて病気になるって…怖すぎるだろ…!
そこで登場するのがビタミンKなんだ。2022年に科学誌Natureに掲載された研究で、ビタミンKが「フェロトーシスを強力に抑制する」ことが発見されたんだよ。
Natureって地球の科学雑誌の最高峰じゃないか!
体内にあるFSP1という酵素がビタミンKを還元して「MK4-H」という活性型に変換する。このMK4-Hが脂質の酸化を強力に阻止して、神経細胞をフェロトーシスから守るんだ。
つまりFSP1がビタミンKを「武器」に変えて脳の錆びを止めるってこと?
まさにそう。しかも通常、脳のフェロトーシス防御を担っているGPX4という酵素は加齢とともに活性が低下する。でもビタミンK-FSP1は全く別の経路だから、GPX4が弱っても「第2の防御ライン」として脳を守れる可能性があるんだ。
二重のバリア!? ゲームで言うところの「サブ防具」みたいなもんだな!
いい例えだね。さらにアメリカのラッシュ大学のBooth博士らが2022年に発表した研究では、亡くなった325人の高齢者の脳を調べたところ、脳内のビタミンK(MK4)濃度が高い人ほど、認知症のリスクが17%から20%低く、アルツハイマー病の特徴である神経原線維変化も有意に少なかったんだ。
17%から20%!! それってかなり大きいぞ!?
そしてここからが一番ワクワクする話なんだけど…2025年に日本の芝浦工業大学の廣田佳久准教授と須原義智教授のチームが、画期的な発見をしたんだ。
日本の研究者!? すごいな地球人!
彼らはビタミンKにビタミンAの成分(レチノイン酸)の構造を組み合わせた「新型ビタミンK誘導体」を合成した。そしてこの新型は、天然のビタミンKの約3倍の効率で神経幹細胞を成熟した神経細胞に分化させることに成功したんだ。しかも動物実験で血液脳関門を通過できることも確認された。
さ、3倍!? しかも脳に届く!? つまり脳の細胞を「育てる」ことができるってこと?
メカニズムとしては、代謝型グルタミン酸受容体1(mGluR1)を活性化して、そこからエピジェネティックな変化を引き起こして神経分化を促すと考えられているんだ。
ちょっと待って、頭がパンクしそうだ…。つまり整理すると、ビタミンKは「脳の錆び死にを防ぐ盾」であり、さらに「脳の細胞を育てる種」でもあるってこと?
完璧な要約だね。防御と再生、両方の力を持っているかもしれない栄養素なんだよ。
で、実際に地球人はどうやってビタミンKを摂れるんだ?
一番身近なのがさっきの納豆だね。納豆1パック40gには約350マイクログラムのビタミンK2が含まれていて、1日の推奨摂取量の2倍以上なんだ。他にもほうれん草、ブロッコリー、小松菜にはビタミンK1が豊富だし、チーズや卵黄にもK2が含まれているよ。
あのネバネバ、そんなに優秀だったのか…! ふっふっふ…ひらめいたぞ!「超高濃度ビタミンK爆弾」を開発して地球人の脳を超活性化させればみんな幸せになるんじゃないか?。
…みんなネバネバして嫌がると思うよ…。それに注意点もある。芝浦工大の新型ビタミンK誘導体はまだ動物実験レベルだから、サプリで大量に摂れば脳が劇的に良くなるという話ではないんだ。ワルファリンという血液をサラサラにする薬を飲んでいる人は、ビタミンKの摂取量に制限があるから必ず医師に相談が必要だしね。
なるほど。でも毎日の食事にビタミンKを意識するのは良いことなんだろ?
もちろん。緑黄色野菜や発酵食品をバランスよく摂ることは、脳の健康にとって間違いなくプラスだよ。ビタミンKという地味な存在が実は脳を「錆び」から守り、さらに細胞の再生まで促す可能性がある。地球の食文化って、本当によくできているね。
よし!今日のレポートのタイトルは…「納豆が脳の盾だった!?ビタミンKが神経細胞の錆び死にを防ぎ脳を再生させる驚愕のメカニズム」…どうだ!?
いいタイトルだね。さて、参考文献をまとめておこうか。…ヤーモリ?
よーし、僕も明日から…納豆を…食べ…。いや、パンケーキに納豆をかけるのはどうだ!? 画期的じゃないか!?
…それは絶対にやめた方がいいと思うよ。
📚 参考文献
Mishima, E., Ito, J., Wu, Z., et al. (2022)
A non-canonical vitamin K cycle is a potent ferroptosis suppressor. Nature, 608, 778–783.
https://doi.org/10.1038/s41586-022-05022-3
Booth, S. L., Shea, M. K., Barber, E., et al. (2022)
Association of vitamin K with cognitive decline and neuropathology in community-dwelling older persons. Alzheimer’s & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions, 8(1), e12255.
https://doi.org/10.1002/trc2.12255
Hirota, Y., & Suhara, Y. (2025)
A new class of vitamin K analogues containing the side chain of retinoic acid have enhanced activity for inducing neuronal differentiation. ACS Chemical Neuroscience, 16(14), 2407–2419.
https://doi.org/10.1021/acschemneuro.5c00111
Li, J., Bhatt, S., & Bhatt, K. (2025)
Vitamin K suppression of ferroptosis in neuronal model systems. Nutritional Neuroscience.
https://doi.org/10.1080/1028415X.2025.2460682
Alisi, L., Cao, R., De Angelis, C., et al. (2024)
The role of vitamin K2 in cognitive impairment: linking vascular health to brain health. Frontiers in Aging Neuroscience, 16, 1527535.
https://doi.org/10.3389/fnagi.2024.1527535
Saputra, W. D., Aoyama, N., Komai, M., & Shirakawa, H. (2022)
Vitamin K2 (Menaquinone-7) reverses age-related structural and cognitive deterioration in naturally aging rats. Antioxidants, 11(3), 514.
https://doi.org/10.3390/antiox11030514