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2026年5月16日

なぜ「推し」がいると毎日が輝くのか?推し活が脳の報酬系を活性化し幸福度を高める驚異のメカニズム

なぜ「推し」がいると毎日が輝くのか?推し活が脳の報酬系を活性化し幸福度を高める驚異のメカニズム
ヤーモリ
イーモリ、イーモリ!ちょっとこっち来てくれ!モニター3番に映ってる地球人、すごいぞ!
イーモリ
なんだい、そんなに騒いで。……ああ、日本のエリアに住んでいる若い女性だね。何か変わったことでもしているのかい?
ヤーモリ
変わったこと? 変わったことどころじゃないぞ!この地球人、壁一面にポスターを貼って、光る棒を振りながら画面に向かって叫んでるんだ!しかもめちゃくちゃ幸せそう!!
イーモリ
ふふふ。それは『推し活(おしかつ)』と呼ばれる行動だよ。自分が応援している人物……アイドルや俳優、アニメのキャラクターなどを熱心に応援する活動のことさ。
ヤーモリ
推し活? なんだそれ、宗教か? 崇拝対象がいて、お布施を払って、儀式的に叫ぶ……。
イーモリ
まあ、外から見たらそう見えるかもしれないけどね。でもこれ、実は脳科学的にものすごく理にかなった行動なんだ。野村総合研究所の調査では、推し活をしている人のうち幸福度が高い(8点以上)と答えた割合は、推し活をしていない人の約2倍にのぼるという結果が出ているんだよ。
ヤーモリ
2倍!? 僕がパンケーキを食べた時の幸福度と比べたらどうなんだ?
イーモリ
君のパンケーキ幸福度は測定不能だから比較できないよ。……まず、推し活がなぜ脳を幸せにするか、一番のキーワードは『ドーパミン』だ。
ヤーモリ
ドーパミン! それは知ってるぞ。脳の『ごほうび物質』だろ?
イーモリ
そうだね。正確には、ドーパミンは報酬系と呼ばれる神経回路で中心的な役割を果たす神経伝達物質だ。腹側被蓋野(VTA)から側坐核や前頭前野に投射されて、快感や動機づけを生み出す。推しの新しい情報、ライブの告知、グッズの発売……こうした情報を受け取るたびに、この報酬系が活性化するんだ。
ヤーモリ
ということは、推しの新曲が出るたびに脳が『ごほうびだー!』って喜んでるってことか!
イーモリ
まさにその通り。しかも面白いのは、ドーパミンは実際にごほうびをもらった時だけでなく、『ごほうびが来そうだ』という期待の段階でも大量に分泌されるんだ。Schultzら(1997)の有名な研究で、サルの脳内ドーパミンニューロンは学習が進むにつれて、報酬そのものへの発火が減少し、報酬を予測する手がかりの時点で発火するように移行することが示されている。いわゆる「報酬予測誤差」の符号化だね。
ヤーモリ
え!つまり、ライブのチケットが当選した瞬間にも、脳がすごく興奮してるってこと!?
イーモリ
そうだね、期待している段階でもドーパミンは活発に出ている。推し活をしている人の脳は、常に次の楽しみを予測しているから、日常的にドーパミンが分泌されやすい状態にある。これは脳にとって非常にポジティブなサイクルなんだ。
ヤーモリ
なるほど……。じゃあ僕も推しを作れば毎日ハッピーってわけだな!よし、僕の推しは……パンケーキ!パンケーキを推す!パンケーキのライブに行く!
イーモリ
パンケーキのライブって何だい……。まあ、食べ物への愛着もドーパミン系は関与しているけど、推し活にはもうひとつ重要な要素がある。それが『パラソーシャル関係』だ。
ヤーモリ
パラソーシャル? パラシュートの仲間か?
イーモリ
違うよ。パラソーシャル関係というのは、心理学者のHortonとWohl(1956)が提唱した概念で、メディアを通じた一方向的な擬似的社会関係のことだ。つまり、実際には会ったことがない相手に対して、まるで友人や恋人のような親密さを感じる関係性のことさ。
ヤーモリ
ああ、片思いみたいなものか!
イーモリ
近いね。でも重要なのは、脳はこのパラソーシャル関係を『本物の関係』とある程度似た形で処理している可能性があるということなんだ。パラソーシャル関係と実際の社会的絆が、脳の中で類似した神経メカニズムを使って処理されているのではないかと、近年の研究で示唆されているよ。
ヤーモリ
えーーーー! 脳が『推しは友達!』って本気で思ってるってこと!?
イーモリ
完全に同じとまでは言えないけど、かなり重なっているようだね。2025年にKanberらがSocial Cognitive and Affective Neuroscienceに発表したfMRI研究では、個人的に価値を感じている声を聞いた時に、報酬処理に関連する脳領域が強く活性化し、報酬に動機づけられた行動が引き出されることが確認されている。つまり、大切に思っている人の声を聞くだけで脳の報酬系が反応するんだ。
ヤーモリ
声だけでドカン!? す、すごいな地球人の脳は……。
イーモリ
さらに興味深いのは、推し活にはオキシトシンも関与している可能性があることだ。オキシトシンは『絆ホルモン』とも呼ばれ、社会的つながりや信頼感を強化する神経ペプチドだ。ファンコミュニティでの交流、一緒にライブで盛り上がる体験、SNSでの推し仲間との語り合い……こうした社会的交流は、一般にオキシトシンの分泌を促進すると考えられている。ただし、推し活での分泌を直接測定した研究はまだ少ないけどね。
ヤーモリ
推しを通じて仲間ができて、仲間との絆でまた脳が幸せになるのか!一石二鳥じゃないか!
イーモリ
その通り。Arizabal & Yabut(2025)の研究では、K-POPファンダムにおいて、ファンダムへのアイデンティティが社会的つながりの感覚を媒介して、メンタルヘルスにポジティブな影響を与えることが示されているんだ。つまり『推しが好き』→『同じ推しの仲間ができる』→『つながりを感じる』→『心が健康になる』というルートだね。
ヤーモリ
すごいな! じゃあ、推し活は脳にとって完全にいいことずくめじゃないか!
イーモリ
……と言いたいところだけど、ここで注意点もある。ドーパミンの報酬系は、依存のメカニズムとも密接に関連しているんだ。推し活に過度にのめり込みすぎると、他の活動から得られる報酬に脳が反応しにくくなる可能性がある。
ヤーモリ
え……。つまり推し活にハマりすぎると、パンケーキが美味しく感じなくなるってこと!? それは大問題だ!!
イーモリ
君の場合はそこが基準なんだね……。精神医学の分野では、度が過ぎた趣味への没頭は行動嗜癖に類似したパターンを示すことがあると指摘されている。課金が止められない、推しのことが気になって仕事や勉強が手につかない、推しの活動がないと気分が極端に落ち込む……こうなると注意が必要だ。
ヤーモリ
脳の『ごほうびセンサー』が推し活に最適化されすぎちゃうってことか。
イーモリ
いい表現だね。でも安心して。健全な推し活には、むしろ脳を守る効果がたくさんある。たとえば、推し活には目標設定と達成のサイクルが含まれている。『次のライブまでにお金を貯める』『グッズを集める』『推しの出演作品を全部観る』……こうした小さな目標と達成が、前頭前野の実行機能を活性化させるんだ。
ヤーモリ
推し活が脳トレになってるってこと!?
イーモリ
そう言えるね。さらに、脳科学の分野では、脳の健康に必要な要素として『運動、趣味・好奇心、コミュニケーション、睡眠、食事、そして主観的幸福感』が重要だと言われているんだけど、推し活はこのうち複数を一度にカバーできる効率的な活動だと考えられているんだ。
ヤーモリ
たしかに!ライブに行けば運動になるし、新しい曲を覚えれば好奇心が刺激されるし、ファン仲間とおしゃべりすればコミュニケーションになるし……。
イーモリ
そうそう。そして一般的に、好きなものに対する情熱を持ち続けることが、脳の可塑性を維持するのに重要だと考えられている。推し活もその一つの形と言えるだろうね。
ヤーモリ
よし!これは大発見だ!僕はこのデータをもとに『推し活促進マシン』を作るぞ!地球人を推し活漬けにして、全員をハッピーにして、油断したところで侵略だ!
イーモリ
だから、過度にのめり込ませたらダメだって言ったばかりだろう……。
ヤーモリ
えー、じゃあどうすればいいんだよ!
イーモリ
健全な推し活のポイントをまとめると、こうだ。まず、推し活は『生活を豊かにする調味料』であって『主食』にしないこと。睡眠・仕事・人間関係など生活の基盤を維持した上で楽しむのが理想だ。次に、ファンコミュニティとの交流を大切にすること。孤独な推し活よりも、仲間と共有する推し活の方がオキシトシン効果が高い。そして、推し活を通じて新しいことを学ぶ姿勢を持つこと。推しが紹介した本を読む、推しの出身地を調べるなど、好奇心の連鎖を広げることが脳にとって最高の栄養になるんだ。
ヤーモリ
なるほどなぁ……。推し活って、ただキャーキャー言ってるだけじゃなくて、脳にとっては高度な幸福戦略だったんだな。
イーモリ
その通りだよ。地球人は無意識のうちに、自分の脳を幸せにする方法を編み出しているんだ。僕たちにはない、とても素敵な文化だと思うよ。
ヤーモリ
よーし、僕も今日から推し活を始めるぞ!推しは……パンケーキ!パンケーキの歴史を調べて、パンケーキファンコミュニティに入って、パンケーキのグッズを集めるんだ!
イーモリ
……それはもはや推し活というより、ただの食いしん坊じゃないかい?
ヤーモリ
いいもん。いいもん。僕の脳がパンケーキで幸せなんだから、それでいいんだもん……。ドーパミンどばどばだもん。

参考文献

Schultz, W., Dayan, P., & Montague, P. R. (1997). A neural substrate of prediction and reward. Science, 275(5306), 1593-1599. https://doi.org/10.1126/science.275.5306.1593

Horton, D., & Wohl, R. R. (1956). Mass communication and para-social interaction: Observations on intimacy at a distance. Psychiatry, 19(3), 215-229. https://doi.org/10.1080/00332747.1956.11023049

Arizabal, J. J. R., & Yabut, H. J. (2025). The mediating effect of social connectedness in the relationship between K-Pop fandom identity and mental health. SAGE Open, 15(3). https://doi.org/10.1177/21582440251369989

Kanber, E., Roiser, J. P., & McGettigan, C. (2025). Personally valued voices engage reward-motivated behaviour and brain responses. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 20(1), nsaf056. https://doi.org/10.1093/scan/nsaf056

野村総合研究所 (2023). データでみる日本人の幸福なライフスタイル. https://www.nri.com/jp/knowledge/report/20230509.html

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