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2026年9月15日

免疫力は脳で変わるとは?ポジティブな想像が抗体を増やす仕組みと高め方

免疫力は脳で変わるとは?ポジティブな想像が抗体を増やす仕組みと高め方
ヤーモリ
イーモリ、ちょっとこっち来て見てくれよ。同じオフィスで働いている地球人たちなのに、あの端っこの男はしょっちゅう鼻をすすっているのに、隣の女性は全然平気そうだぞ。
イーモリ
本当だね。季節の変わり目になると、毎年風邪をひく人とほとんどひかない人がいる。気になるところだ。
ヤーモリ
きっと体の丈夫さが違うんだろ? 筋肉とか、ご飯の量とか。僕なんかパンケーキ毎日食べてるから最強だぞ!
イーモリ
パンケーキで最強にはならないよ。でも面白い疑問だね。実は最新の研究で、免疫力の差に「脳」が深く関わっていることがわかってきたんだ。
ヤーモリ
脳? 免疫って、体の中の白血球とか抗体とか、そういう話じゃないのか? 脳は関係ないだろ。
イーモリ
そう思うよね。でも「精神神経免疫学」——英語ではPsychoneuroimmunology、略してPNIという研究分野があってね。これは、脳の活動が神経系やホルモンを通じて免疫システムに影響を与えること、逆に免疫の状態が脳の活動や気分を変えることを研究する学問なんだ。
ヤーモリ
サイコ……ニューロ……イミュノロジー? 長すぎて舌がもつれるぞ!
イーモリ
簡単に言うと、「気持ちや考え方が、体の防御力を変える」ということだよ。たとえばストレスを感じると風邪をひきやすくなるのは知ってるだろう? あれは脳がストレスホルモンを出して、免疫細胞の働きを弱めているからなんだ。
ヤーモリ
あー、確かに地球人は「病は気から」って言うよな。あれって本当だったのか!
イーモリ
まさにその通り。1975年にAder & Cohenがマウスの免疫反応が条件づけで変化することを示したのが、精神神経免疫学の出発点と言われている。それ以来、脳のどの部位が、どの神経を通って、どの免疫細胞に指令を出すか、分子レベルで解明されつつあるんだ。
ヤーモリ
分子レベル! かっこいいな! で、脳のどこがそのスイッチになっているんだ?
イーモリ
鍵を握るのは「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)」、英語でVTAという部位だよ。脳の奥深くにある小さな領域で、ドーパミンを作るニューロンが密集している。報酬系の「司令塔」とも呼ばれる場所だね。
ヤーモリ
ドーパミン! パンケーキを食べたときに「うまーい!」って感じるやつだろ?
イーモリ
そうそう。おいしいものを食べたとき、楽しいことを想像したとき——VTAのドーパミンニューロンが活性化して「これはいいぞ!」という信号を出す。ところが最近、このVTAの信号が脳の中だけに留まらず、体全体の免疫システムにまで届いていることがわかったんだ。
ヤーモリ
えっ、脳の信号が免疫にまで届くの? どうやって?
イーモリ
主なルートは「交感神経」だよ。交感神経は脾臓やリンパ節といった免疫の拠点に直接つながっている。VTAが活性化すると、この交感神経を介してノルアドレナリンが放出され、それが免疫細胞——特にT細胞やマクロファージに「もっと働け」と指令を出すんだ。Kayamaらの研究でも、交感神経を除去するとVTA刺激による免疫効果が消失することが確認されている。
ヤーモリ
つまり脳が「楽しい!」って感じると、その信号が神経の高速道路を通って免疫軍団に届いて、「パトロール強化!」ってなるわけか!
イーモリ
いいたとえだね。マウスの実験でも示されているよ。東北大学のKayamaらの研究(2022年、Scientific Reports)では、光遺伝学という技術でマウスのVTAドーパミンニューロンを人工的に活性化させたところ、血中の免疫サイトカイン——IL-2やTNF-αの量が増加したんだ。
ヤーモリ
すげー! でもそれはマウスの話だろ? 地球人にも当てはまるのか?
イーモリ
いい質問だね。2026年1月にNature Medicineに掲載されたLubianikerらの研究が、ヒトで初めてこの関連を示したんだ。
ヤーモリ
Nature Medicine! 地球人の論文誌の中でもトップクラスだな! 何をやったんだ?
イーモリ
85人の健康な参加者を集めて、二重盲検のランダム化比較試験を行ったんだ。まずfMRIという脳画像装置の中に入ってもらい、「ニューロフィードバック」という手法で、VTAの活動を自分の意思で高めるトレーニングをした。画面にVTAの活動レベルがリアルタイムで表示されて、参加者は「過去の楽しかった旅行を思い出す」「好きな音楽のライブを想像する」といったポジティブな想像で、そのバーを上げるように練習したんだ。
ヤーモリ
ゲームみたいだな! 楽しいことを考えるだけで脳のバーが上がるって、すごくないか!?
イーモリ
そしてここからが核心だよ。このトレーニングの後、全員にB型肝炎ウイルスのワクチンを接種して、その後の抗体量を測定した。すると——VTAの活動をより大きく上昇させることができた人ほど、ワクチン接種後の抗体の増加量が大きかったんだ。相関係数r=0.31で、統計的にも有意だった。
ヤーモリ
なにーーーーーーーー! ポジティブなことを想像しただけで、ワクチンが効きやすくなったってこと!?
イーモリ
正確に言うと、VTAの活性化の度合いと抗体量に正の相関があったということだね。特に興味深いのは、VTAを持続的に高い状態に保てた人たちは、「ポジティブな期待」を伴う想像をしていた傾向が強かったんだ。つまり、ただ楽しいことを思い出すだけでなく、「いいことが起きるぞ」という期待感を持つことがポイントだった。研究チームは、この結果がプラセボ効果の神経メカニズムの一端を説明する可能性があると述べているよ。
ヤーモリ
でも待ってくれよ。VTAを活性化しやすい人としにくい人がいるんだろ? それって生まれつき決まってるのか?
イーモリ
ドーパミンの出やすさには確かに遺伝的な個人差があるよ。でも、今回の研究でニューロフィードバックのトレーニングによって「上達」した参加者がいたように、報酬系の反応性は後天的に鍛えられるんだ。ピッツバーグ大学のMarslandらの2006年の研究でも、ポジティブな感情を持ちやすい人ほどB型肝炎ワクチンへの抗体反応が高かったけれど、ポジティブな感情の傾向は日々の習慣で変えられることもわかっている。
ヤーモリ
じゃあ、生まれつきネガティブでも、練習次第で免疫にいい影響を与えられるかもしれないってことか!
イーモリ
その可能性はあるね。ただ注意してほしいのは、Lubianikerらの研究ではVTA活動と抗体量の「相関」が示されただけで、トレーニング群と対照群の間で抗体量に有意差が出たわけではないんだ。だから「鍛えれば免疫が必ず上がる」とまでは言えない段階なんだよ。

とはいえ、慢性的なストレスや孤立が報酬系の反応を鈍くして免疫を弱めることは多くの研究で裏付けられている。Cohenらの有名な研究でも、社会的つながりが豊かな人ほど風邪ウイルスに感染した後に症状が出にくいことが示されているよ。
ヤーモリ
よし! じゃあ具体的に何をすればいいんだ? 僕にもできることを教えてくれ!
イーモリ
4つあるよ。1つ目は「ポジティブな想像」。今回の研究で参加者が使った方法そのものだね。過去の楽しかった体験を思い出すか、これから楽しみな予定を具体的に想像する。1日5分、目を閉じてやるだけでいい。
ヤーモリ
パンケーキ食べてるところ想像すればいいのか?
イーモリ
……まあ、それでもVTAは動くだろうね。2つ目は「感謝日記」。寝る前にその日あった良かったことを3つ書く。Emmons & McCullough(2003)の研究では、感謝日記をつけたグループのほうが主観的な幸福感が高まったと報告されている。ポジティブ感情の土台が安定すれば、報酬系も反応しやすくなると考えられているよ。3つ目は「適度な運動」。運動は全般的にドーパミンの分泌を促すことが知られていて、免疫細胞の循環も良くなる。WHOのガイドラインでは週150分の中強度運動が推奨されているね。
ヤーモリ
想像、感謝、運動か。4つ目は?
イーモリ
「社会的つながり」だ。友人や家族との温かい交流はポジティブ感情を高め、報酬系の活性化につながりやすい。さっきのCohenらの研究が示すように、社会的つながりの豊かさは感染症への抵抗力とも関連している。人と過ごす時間も免疫にとって大事なんだよ。
ヤーモリ
つまりまとめると——脳の奥にあるVTAという「やる気のエンジン」を、ポジティブな想像や感謝や運動で回してやると、そのエネルギーが交感神経を通って免疫軍団に届き、体の防御力が高まる……ってことでいいのか?
イーモリ
完璧なまとめだね。精神神経免疫学が教えてくれるのは、「心と体は別々ではなく、脳という指揮者のもとでつながっている」ということなんだ。ただし、これはあくまで免疫の「底上げ」であって万能薬ではない。体調不良が2週間以上続くようなら、それはポジティブ思考だけの問題ではないかもしれない。必ず医療機関に相談してほしい。
ヤーモリ
ふっふっふ……イーモリ、閃いたぞ。24時間パンケーキのことだけ考えて過ごせば、VTAが常にフル稼働して、僕は病気知らずの無敵ボディになる! 名付けて「パンケーキ免疫ブーストプラン」!!!
イーモリ
……それはVTAの活性化じゃなくて、ただの食べすぎで別の病気になるやつだよ。

参考文献

Ader, R., & Cohen, N. (1975). Behaviorally conditioned immunosuppression. Psychosomatic Medicine, 37(4), 333–340. https://doi.org/10.1097/00006842-197507000-00007

Cohen, S., Doyle, W. J., Skoner, D. P., Rabin, B. S., & Gwaltney, J. M. (1997). Social ties and susceptibility to the common cold. JAMA, 277(24), 1940–1944. https://doi.org/10.1001/jama.1997.03540480040036

Emmons, R. A., & McCullough, M. E. (2003). Counting blessings versus burdens: An experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of Personality and Social Psychology, 84(2), 377–389. https://doi.org/10.1037/0022-3514.84.2.377

Kayama, T., Ikegaya, Y., & Sasaki, T. (2022). Phasic firing of dopaminergic neurons in the ventral tegmental area triggers peripheral immune responses. Scientific Reports, 12, 1447. https://doi.org/10.1038/s41598-022-05306-8

Lubianiker, N., Koren, T., Djerasi, M., … Rolls, A., & Hendler, T. (2026). Upregulation of reward mesolimbic activity and immune response to vaccination: A randomized controlled trial. Nature Medicine, 32(2), 572–581. https://doi.org/10.1038/s41591-025-04140-5

Marsland, A. L., Cohen, S., Rabin, B. S., & Manuck, S. B. (2006). Trait positive affect and antibody response to hepatitis B vaccination. Brain, Behavior, and Immunity, 20(3), 261–269. https://doi.org/10.1016/j.bbi.2005.08.009

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