システム開発・DX導入支援のシナプス・コード

2026年8月27日

「ゾワゾワ」で脳が溶ける!?ASMRが脳の報酬回路をハックし心拍数まで下げる驚がくのメカニズム

「ゾワゾワ」で脳が溶ける!?ASMRが脳の報酬回路をハックし心拍数まで下げる驚がくのメカニズム
ヤーモリ
イーモリ!イーモリ!大変だ!あの地球人を見てくれ!
イーモリ
どうしたんだい、ヤーモリ。…ああ、あの20代の女性か。部屋を暗くしてイヤホンをつけて…何か動画を見ているみたいだね。
ヤーモリ
見てくれよ…誰かが耳元で『しゃくしゃくしゃく…』ってキュウリを切ってる動画を延々と見てるんだぞ!?しかもなんか…すっごい気持ちよさそうな顔してる!
イーモリ
ふふ、それは『ASMR』だよ。Autonomous Sensory Meridian Response。日本語では『自律感覚絶頂反応』と呼ばれている。
ヤーモリ
じ、自律感覚絶頂反応!?なんかすごい名前だな!地球人の秘密兵器か何かか!?
イーモリ
兵器じゃないよ。特定の音や映像を見聞きしたときに、頭皮や首筋から背中にかけて『ゾワゾワ』『ゾクゾク』とした心地よいティングル(tingling)が走る現象のことさ。
ヤーモリ
ゾワゾワ?それって…鳥肌みたいなやつか?
イーモリ
近いけどちょっと違う。鳥肌は恐怖や寒さでも起きるけど、ASMRのティングルは基本的に『心地よさ』を伴うんだ。頭のてっぺんからじわーっと温かい波が広がっていくような感覚だね。
ヤーモリ
へぇー。でもなんでキュウリを切る音なんかで気持ちよくなるんだ?僕はパンケーキの音の方がいいけどなぁ。
イーモリ
ASMRにはいろんな『トリガー(引き金)』があるんだ。Barratt & Davis(2015)の研究では、475人のASMR体験者を調査して、もっとも多いトリガーを特定している。
ヤーモリ
おお!何が人気なんだ?
イーモリ
1位は『ささやき声(whispering)』。2位は『個人的な注目(personal attention)』…たとえばロールプレイで美容師さんが髪を触ってくれるような動画だね。3位は『カリカリ、パリパリという鮮明な音(crisp sounds)』。タッピングやスクラッチングもこれに入る。
ヤーモリ
ささやき声が1位!?じゃあ僕が毎晩こっそり『今日のパンケーキは最高だったなぁ…ふふふ…』ってささやいてるのもASMRだったのか!
イーモリ
…それはただの独り言だよ。
ヤーモリ
ぐっ…。じゃあさ、このゾワゾワが起きてるとき、脳の中では何が起きてるんだ?
イーモリ
いい質問だね。2018年にLochteたちがfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を使って、ASMRのティングルが起きている最中の脳を撮影したんだ。すると、とても興味深い領域が活性化していた。
ヤーモリ
どこが光ったんだ!?
イーモリ
まず『側坐核(そくざかく)』。ここは脳の報酬系の中核で、ドーパミンを放出する場所だ。美味しいものを食べたとき、褒められたとき、好きな音楽を聴いたときに活性化する、あの快楽の中枢だよ。
ヤーモリ
パンケーキを食べたときと同じ場所が光るのか!?つまりASMRは…脳内パンケーキ!?
イーモリ
…まあ、報酬系が活性化するという意味では遠くはないかな。さらに『島皮質(とうひしつ)』も活性化していた。ここは体の内側の感覚と感情をつなぐ場所で、自律神経のバランスにも関わっている。そして『内側前頭前皮質(mPFC)』。ここは共感や社会的認知に関わる領域なんだ。
ヤーモリ
共感…?ゾワゾワと共感に何の関係があるんだ?
イーモリ
実はここが面白いところでね。ASMRのトリガーの多くは『誰かがあなたに優しく注目してくれている』状況なんだ。ささやき声、髪を梳かす音、耳かき…。つまりASMRは、脳が『今、自分は安全で、誰かにケアされている』と感じたときに起きる反応かもしれない。
ヤーモリ
誰かにケアされてる感覚…。あっ!それってもしかして…
イーモリ
そう。ASMR研究者たちは、ASMRは『社会的グルーミング(毛づくろい)』の名残ではないかと提唱している。サルの群れでは、仲間同士で毛づくろいをすることで寄生虫を除去しつつ、オキシトシンやエンドルフィンが分泌されて社会的な絆を強化するんだ。
ヤーモリ
えっ!じゃあ地球人がASMR動画を見てゾワゾワしてるのは、脳が『今、仲間に毛づくろいしてもらってる!』と勘違いしてるってことか!?
イーモリ
『勘違い』というより、古い神経回路が反応していると言った方が正確だね。画面越しのささやき声や手の動きが、対面でケアされている感覚を脳に再現させている。だからグルーミング時と同様の神経化学的な反応——例えばオキシトシンやエンドルフィンの関与——が仮説として議論されているんだ。
ヤーモリ
へぇー!でもそれって本当に体にも影響があるの?気のせいじゃなくて?
イーモリ
気のせいじゃないよ。Poerioたちの2018年の研究で、ASMR体験者がトリガー動画を見ているとき、ASMR体験者はトリガー動画を見ているあいだ心拍数が平均で毎分3.41拍も低下していた。しかもこの低下は非体験者には見られず、両者のあいだには統計的に有意な差があったんだ。
ヤーモリ
3拍も!?動画を見てるだけで!?
イーモリ
さらに面白いのは、同時に皮膚電気活動(skin conductance)は上昇していたこと。つまりASMRは『リラックスしているのに、同時に覚醒もしている』という、ちょっと矛盾した状態を作り出すんだ。副交感神経が優位になりつつ、脳は心地よい興奮を感じている。
ヤーモリ
リラックスしてるのに覚醒してる…。それってまるで、僕がパンケーキ食べながらお昼寝してるときみたいだな!至福なのにちょっとドキドキする感じ!
イーモリ
…その例えは微妙だけど、感覚としては近いかもしれないね。
ヤーモリ
じゃあさ、ASMRを感じやすい人と感じにくい人で、脳に違いはあるのか?
イーモリ
あるんだ。Smithたちが2019年に発表した研究では、ASMRを体験できる人の脳は、安静時の『デフォルトモードネットワーク(DMN)』の接続パターンが異なっていた。具体的には、楔前部の結合が弱い一方、隣接する楔部の結合が強いなど、安静時の”素の脳”のネットワーク区分が対照群ほど明確でなかったんだ。
ヤーモリ
DMN…あのぼんやりしてるときに動くやつか!
イーモリ
そうそう。ただしこれはあくまで安静時の”素の脳”の話だよ。ASMRを聴いている最中はまた違うことが起きる。2026年に新潟医療福祉大学が、ASMRトリガーとクラシック音楽を聴いているときの脳内ネットワークをfMRIで比較した最新研究を発表した。すると、ASMRトリガーを聴いているときだけ、DMN内の機能的結合が特異的に強まることがわかったんだ。クラシック音楽では起きなかったパターンだよ。
ヤーモリ
へぇー!つまりASMRは単なる『いい音』とは脳の反応が全然違うってことか!
イーモリ
その通り。ASMRは音楽とは異なる独自の神経メカニズムを持っている。単に心地よい音を聴いているのではなく、脳の社会的・感情的な回路が特別な形で活性化されているんだ。
ヤーモリ
でもさ、イーモリ。僕の部下のブーコイなんか、ささやき声を聞くと『イライラする!やめてくれ!』って怒り出すんだけど…。
イーモリ
ああ、それは『ミソフォニア(音嫌悪症)』かもしれないね。特定の音に対して強い不快感や怒りを感じる状態だ。実は最近の研究で、ASMRとミソフォニアは脳の同じ領域、特に島皮質と前帯状皮質が関与していることが示されている(Lin & Kondo, 2024, Phil. Trans. R. Soc. B)。
ヤーモリ
えっ!快感と不快感で同じ場所が動いてるのか!?
イーモリ
そうなんだ。どちらも音に対する感受性が高い状態で、島皮質での処理が関わっている。ただ、その音が『安心・ケア』として処理されるか、『侵害・脅威』として処理されるかで、真逆の反応が生まれる。表と裏の関係だね。
ヤーモリ
じゃあ、ASMRを感じやすい人ってどんな性格なんだ?
イーモリ
Fredborg たちの2017年の研究では、ビッグファイブ性格特性で分析した結果、ASMR体験者は『開放性(Openness to Experience)』と『神経症傾向(Neuroticism)』が有意に高い一方、『誠実性』『外向性』『協調性』は低い傾向があったんだ。つまり、新しい体験に対してオープンで、感情の振れ幅が大きい人ほどASMRを感じやすい傾向がある。
ヤーモリ
開放性が高い…新しいものが好き…。あっ!僕じゃないか!僕は地球のアニメも漫画も何でも受け入れる、超オープンマインドだぞ!
イーモリ
…それは開放性というより、ただのサブカル好きだと思うよ。
ヤーモリ
ぐぬぬ…。でもさ、ASMRって結局、ただの趣味の話なのか?それとも何かに使えるの?
イーモリ
いい視点だね。Barratt & Davis(2015)の調査では、ASMR体験者の98%が『リラクゼーション目的』で利用し、82%が『入眠補助』として使っていた。さらに70%が『ストレス対処』として活用していたんだ。
ヤーモリ
98%がリラクゼーション!ほぼ全員じゃないか!
イーモリ
そうだね。そしてBarratt & Davis(2015)の調査では、慢性疼痛やうつ症状を抱える体験者から、ASMR中に症状が一時的に和らぐという報告も得られているんだ。痛みの緩和や不安の軽減に応用できる可能性がある。実は先ほど紹介したASMRとミソフォニアの脳回路の論文(Lin & Kondo, 2024)の共著者、近藤洋史氏は中京大学の研究者で、ASMRのウェルビーイングへの応用研究を進めているんだよ。
ヤーモリ
すごいな!ゾワゾワが薬の代わりになるかもしれないのか!
イーモリ
ただし、まだ臨床的な治療法として確立されたわけではないから、そこは注意が必要だよ。でも、お金もかからず、副作用もなく、スマホ1台で誰でもアクセスできるという点では、とても魅力的なセルフケアの選択肢だと言えるね。
ヤーモリ
なるほど…。イーモリ、僕はひらめいたぞ!
イーモリ
…嫌な予感がするんだけど。
ヤーモリ
僕たちの宇宙船からASMR電波を地球全体に放射するんだ!全人類を毛づくろいされてる気分にして、みんなリラックスしてゾワゾワしてる間に…地球を侵略する!名付けて『ASMR地球侵略作戦』だ!
イーモリ
…ヤーモリ、さっき言ったよね。ASMRを感じるのは全員じゃないって。それにミソフォニアの人は逆に怒り出すから、大混乱になるだけだよ。
ヤーモリ
ガーン!そ、そうだった…。じゃあ僕は自分用のASMR動画を作る!題して『隊長ヤーモリの耳かきASMR〜パンケーキをもぐもぐする音を添えて〜』!
イーモリ
…咀嚼音はミソフォニアのトリガーとしても報告されてるんだけどね。
ヤーモリ
……もういいもん。いいもん。どーせ僕はASMRすら作れないポンコツだもん…。
イーモリ
まあまあ。その代わり、今夜は僕が淹れたコーヒーのドリップ音を聞かせてあげるよ。ぽたぽた…って。意外と良いASMRトリガーになるかもしれないよ。
ヤーモリ
…ほんと?…じゃあ、ホイップクリームをシュワーって出す音もつけて…?
イーモリ
はいはい。
参考文献
Barratt, E. L., & Davis, N. J. (2015). Autonomous Sensory Meridian Response (ASMR): A flow-like mental state. PeerJ, 3, e851. https://doi.org/10.7717/peerj.851
Fredborg, B. K., Clark, J. M., & Smith, S. D. (2017). An Examination of Personality Traits Associated with Autonomous Sensory Meridian Response (ASMR). Frontiers in Psychology, 8, 247. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.00247
Lochte, B. C., Guillory, S. A., Richard, C. A. H., & Kelley, W. M. (2018). An fMRI investigation of the neural correlates underlying the autonomous sensory meridian response (ASMR). BioImpacts, 8(4), 295–304. https://doi.org/10.15171/bi.2018.32
Poerio, G. L., Blakey, E., Hostler, T. J., & Veltri, T. (2018). More than a feeling: Autonomous sensory meridian response (ASMR) is characterized by reliable changes in affect and physiology. PLOS ONE, 13(6), e0196645. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0196645
Smith, S. D., Fredborg, B. K., & Kornelsen, J. (2019). Atypical Functional Connectivity Associated with Autonomous Sensory Meridian Response: An Examination of Five Resting-State Networks. Brain Connectivity, 9(6), 508–518. https://doi.org/10.1089/brain.2018.0618
Oishi, M., Sasaki, K., Sakurai, N., & Kodama, N. (2026). Differences in brain functional connectivity between autonomous sensory meridian response and classical music. Frontiers in Neuroscience, 20, 1815703. https://doi.org/10.3389/fnins.2026.1815703
Lin, I-F., & Kondo, H. M. (2024). Brain circuits in autonomous sensory meridian response and related phenomena. Philosophical Transactions of the Royal Society B, 379(1908), 20230252. https://doi.org/10.1098/rstb.2023.0252
中京大学 (2025). 音が紡ぐウェルビーイング ASMRと音嫌悪症. https://www.chukyo-u.ac.jp/research_2/news/2025/10/025730.html

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