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2026年6月22日

お金を使うと脳が痛い!?キャッシュレス時代に脳の「支払いの痛み」が消え、衝動買いが止まらなくなる驚がくのメカニズム

お金を使うと脳が痛い!?キャッシュレス時代に脳の「支払いの痛み」が消え、衝動買いが止まらなくなる驚がくのメカニズム
ヤーモリ
イーモリ!あの地球人を見てくれ!さっきからスマホをポチポチしてるんだけど、もう5個も買い物カゴに入れてるぞ!
イーモリ
うーん。確かに。しかも画面に『期間限定50%OFF』という赤い文字が表示されるたびに、目の動きが速くなっているね。
ヤーモリ
なにーーーーーーーーーー!あの人、先月も『使いすぎた』って嘆いてたのに!もう忘れてるのか!?地球人の記憶力はどうなってるんだ!?
イーモリ
ふふふ。これは記憶力の問題じゃないんだよ、ヤーモリ。実はこれ、脳の仕組みそのものが関係しているんだ。
ヤーモリ
脳の仕組み?どういうことだ?僕だってパンケーキの新作が出たらすぐ買っちゃうけど、それとは違うのか?
イーモリ
実はそれも同じメカニズムだよ。今日は『お金を使うときに脳で何が起きているのか』を解説しよう。
ヤーモリ
おぉ!お金と脳の関係か!僕は隊長だからな、地球人のお金の使い方を把握して、資金計画に活かすのだ!ふっふっふ。
イーモリ
まずはこの研究から。2007年にスタンフォード大学のKnutsonらが『Neuron』誌に発表した、非常に有名な実験があるんだ。
イーモリ
実験では被験者をfMRI(脳の活動を測る装置)に入れて、商品と価格を見せながら『買うか買わないか』を判断させたんだ。
ヤーモリ
おぉ、脳をスキャンしながら買い物!地球人って面白い実験するなぁ。
イーモリ
結果がすごく面白い。商品を見て『欲しい!』と感じたとき、脳の『側坐核(そくざかく)』という部分が活性化したんだ。ここはドーパミンが関わる報酬系の中心で、快感や期待感を処理する場所だよ。
ヤーモリ
側坐核!名前がもうラスボスっぽいな!
イーモリ
次に価格を見せたとき、今度は『島皮質(とうひしつ)』、英語ではインスラという領域が反応した。ここは痛みや不快感を処理する場所なんだ。
ヤーモリ
え!?痛み!?お金を払うだけで痛いの!?
イーモリ
そう。これが神経経済学で『支払いの痛み(Pain of Paying)』と呼ばれる現象だよ。お金を手放すことは、脳にとって文字通り『痛い』出来事なんだ。PrelecとLoewensteinが1998年に提唱した概念でね。
ヤーモリ
ガーン!じゃあ僕がパンケーキを買うたびに脳が悲鳴を上げてたのか!?かわいそうな僕の脳!
イーモリ
ふふふ。でも重要なのはここからだよ。Knutsonらの研究では、この2つの領域の活動バランスで、買うか買わないかをかなり正確に予測できたんだ。
イーモリ
つまり、側坐核の『欲しい!』シグナルが島皮質の『痛い!』シグナルを上回れば購入する。逆なら見送る。脳の中で快感と痛みの綱引きが起きているわけだ。
ヤーモリ
脳内で綱引き!?漫画で読んだ『天使と悪魔が肩に乗ってる』やつと同じか!
イーモリ
まあ、近い発想かもね。そしてここからが現代社会の大問題だ。2021年にBankerらが『Scientific Reports』に発表した研究を見てみよう。
ヤーモリ
何がわかったんだ?
イーモリ
彼らはクレジットカード払いと現金払いで脳の反応がどう変わるかをfMRIで調べたんだ。結果、クレジットカードを使うとき、脳の報酬系である線条体が強く活性化した。
イーモリ
これまで『クレジットカードは支払いの痛みを麻酔する(ブレーキを緩める)』と考えられていたけど、この研究では『カードは報酬系のアクセルを踏む』ことがわかったんだ。
ヤーモリ
ブレーキを緩めるだけじゃなくて、アクセルまで踏んでる!?それ、坂道で車が暴走するやつじゃん!
イーモリ
いい例えだね。さらに問題なのは、キャッシュレス決済が普及すればするほど、この『支払いの痛み』が消えていくということだよ。
イーモリ
現金は物理的にお札を手渡すから、脳が『何かを失っている』と認識しやすい。でもスマホ決済は画面をタッチするだけ。脳の痛みセンサーがほとんど反応しなくなるんだ。
ヤーモリ
なにーーーー!じゃあ日本の地球人たちはどんどんキャッシュレスになってるから、どんどん使いすぎちゃうってこと!?
イーモリ
その通り。実際、経済産業省が2026年3月に公表したデータによると、日本のキャッシュレス決済比率は2025年時点で58.0%に達している。現金の時代より、脳のブレーキが効きにくくなっている人が増えていると言えるね。
ヤーモリ
ぐぬぬ……。でもさ、セールの『元値10,000円が今だけ5,000円!』ってやつは、なんであんなに魅力的なんだ?5,000円って冷静に考えたら安くないのに!
イーモリ
いい質問だ。それは『アンカリング効果』と呼ばれる認知バイアスだよ。TverskyとKahnemanが1974年に発表した概念でね。
イーモリ
人間の脳は、最初に提示された数字を『アンカー(錨)』として無意識に基準にしてしまう。だから『10,000円』を先に見せられると、5,000円が『ものすごくお得』に感じるんだ。
ヤーモリ
錨!?脳に錨を打ち込まれてるのか地球人は!?
イーモリ
このアンカリングの厄介なところは、たとえ元値が恣意的な数字だとしても、脳がそれを無意識に『基準』として処理してしまうことなんだ。TverskyとKahnemanの実験では、ルーレットで出たランダムな数字ですら判断に影響を与えたほどだよ。
ヤーモリ
つまりセールの二重価格表示は、脳に錨を打ち込んで、さらにドーパミンのアクセルを踏ませるってこと!?えげつないな!
イーモリ
そしてもう一つ重要なことがある。神経科学者シュルツの有名な研究で明らかになったことだけど、ドーパミンは『手に入れたとき』ではなく、『手に入りそうだと期待しているとき』に最も多く放出されるんだ。
ヤーモリ
えっ!?買った後じゃなくて、買う前にドーパミンが出るの!?
イーモリ
そう。だから『カートに入れる瞬間』や『セール品を見つけた瞬間』が一番気持ちいい。買った後は急速にドーパミンが下がる。これが衝動買いの後に『なんでこれ買ったんだろう……』と後悔する理由だよ。
ヤーモリ
うわあああ!僕もこの前、限定パンケーキメーカーを買って3日で飽きたのはそのせいか!
イーモリ
さらにRickらの2008年の研究では、人間には生まれつき『倹約家タイプ(Tightwad)』と『浪費家タイプ(Spendthrift)』がいることがわかっている。
イーモリ
倹約家は島皮質が過剰に反応して、支払いの痛みを強く感じるから使えない。浪費家は逆に痛みをほとんど感じない。どちらも極端だと問題が起きるんだ。
ヤーモリ
僕は完全に浪費家タイプだな……。イーモリはどっちだ?
イーモリ
僕はコーヒー豆にだけは浪費家かな。コロンビアの高級豆は島皮質が一切反応しないんだ。
ヤーモリ
それはただのコーヒー中毒では……。で、地球人はこの脳の罠からどうやって逃げればいいんだ?
イーモリ
いくつか科学的に効果が確認されている方法があるよ。まず一つ目は、裁量的な支出には現金を使うこと。物理的にお金が減る感覚が島皮質を適度に活性化させて、ブレーキが効くようになる。
イーモリ
二つ目は『24時間ルール』。欲しいものがあったらカートに入れるだけにして、24時間待つ。ドーパミンの興奮が収まった後に冷静に判断できるんだ。前頭前野の理性的な判断が追いつく時間を確保するわけだね。
ヤーモリ
24時間!?僕は24秒も待てないぞ!
イーモリ
三つ目は、セール品を見るときに『元値を無視する』こと。アンカリング効果を回避するには、『この商品に今の値段を出す価値があるか?』と自分に問いかけることが大切だよ。
ヤーモリ
なるほど!わかったぞイーモリ!僕はこの知識を活かして、地球人向けに『絶対に買いたくなくなるセール』を開催するのだ!
イーモリ
……嫌な予感がするな。
ヤーモリ
全商品の値札に『あなたの島皮質が今、痛みを感じています。本当に買いますか?』って書くのだ!さらに全品現金払いのみ!さらにさらに、レジに行くまでに24時間待たせる迷路を設置する!
イーモリ
……それ、ただの嫌がらせだよ。お店が潰れるよ。
ヤーモリ
ガーン!そうかぁ。地球人に節約思考を根付かせるいい機会だと思ったんだがなぁ。
イーモリ
まあまあ。大事なのは、自分の脳がどういう仕組みで動いているかを知ることだよ。知っているだけで、衝動に振り回されにくくなる。これを心理学では『メタ認知』というんだ。
ヤーモリ
メタ認知!つまり『自分の脳が騙されてる!』って気づけるかどうかが大事ってことか!
イーモリ
その通り。今日のまとめだ。お金を使うとき脳の中では、『欲しい!』という報酬系と『痛い!』という痛み系の綱引きが起きている。キャッシュレス決済やセールの仕掛けは、この綱引きのバランスを崩して衝動買いを誘発する。
イーモリ
対策としては、現金の活用、24時間ルール、アンカーの無視、そして何より自分の脳の癖を知ること。これらが科学的に有効だよ。
ヤーモリ
よーし!まずは僕から実践するぞ!今日からパンケーキは現金払いにして、24時間待って……あ。
イーモリ
どうしたの?
ヤーモリ
……24時間後にはパンケーキ売り切れてるよね。
イーモリ
……パンケーキにそのルールを適用する必要はないと思うよ。

参考文献

1. Knutson, B., Rick, S., Wimmer, G. E., Prelec, D., & Loewenstein, G. (2007). Neural predictors of purchases. Neuron, 53(1), 147–156. https://doi.org/10.1016/j.neuron.2006.11.010

2. Prelec, D., & Loewenstein, G. (1998). The Red and the Black: Mental Accounting of Savings and Debt. Marketing Science, 17(1), 4–28. https://doi.org/10.1287/mksc.17.1.4

3. Banker, S., Dunfield, D., Huang, A., & Prelec, D. (2021). Neural mechanisms of credit card spending. Scientific Reports, 11, 4070. https://doi.org/10.1038/s41598-021-83488-3

4. Tversky, A., & Kahneman, D. (1974). Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases. Science, 185(4157), 1124–1131. https://doi.org/10.1126/science.185.4157.1124

5. Rick, S. I., Cryder, C. E., & Loewenstein, G. (2008). Tightwads and Spendthrifts. Journal of Consumer Research, 34(6), 767–782. https://doi.org/10.1086/523285

6. Schultz, W. (1998). Predictive reward signal of dopamine neurons. Journal of Neurophysiology, 80(1), 1–27. https://doi.org/10.1152/jn.1998.80.1.1

7. 経済産業省 (2026). 2025年のキャッシュレス決済比率を算出しました. https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260331006/20260331006.html

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