おーい、イーモリ!小型偵察ドローンの映像を見てくれ。
あの子ども、机に向かっているのに、3分おきに消しゴムをいじったり、窓の外を見たりしているぞ!
地球人の子どもは、みんなああやって「故障」しているのか?
ヤーモリ、あれは「故障」ではなく、成長過程における標準的な動作だ。
地球人の親たちは、あのような様子を見て「うちの子は集中力がない」と嘆くことが多いようだがな。
ええっ!あんなにソワソワしていて、将来ちゃんと落ち着くようになるのか?
僕だって10分は机に座っていられるぞ!
実は、近年の脳科学では「集中力」の正体は、脳の実行機能(Executive Function)にあると考えられている。
これは前頭前野がつかさどる、目標のために感情や行動を制御する力のことだ。
ジッコウキノウ?なんだか難しそうだな。
機械のOSをアップデートすれば解決する話じゃないのか?
地球人の脳は自然進化の産物だから、そう簡単にはいかない。しかも、この実行機能は子どもの頃の「遊び方」で大きく変わるという研究があるんだ。
遊びが仕事!?最高じゃないか!
僕も毎日アニメを見たり漫画を読んだりしているが、あれも「集中力の訓練」になっているのか?
いや、君のはただの「受動的な娯楽」だ。脳を鍛えるのは、もっと能動的で自由な遊び(アンストラクチャード・プレイ)だ。
例えば、ルールを自分で決めたり、目的を自分で設定したりする遊びのことさ。
ルールを自分で決める?
積み木を高く積むとか、砂場で巨大な城を作るとか、そういうことか?
その通り。コロラド大学の研究(Barker et al., 2014)によれば、習い事などの「構造化された時間」が少なく、自由に遊ぶ時間が多い子どもほど、自発的な実行機能が高いという結果が出ているんだ。
ギョエーッ!つまり、大人が「あれしろ、これしろ」と決めたスケジュールに詰め込むほど、子どもの自ら集中する力は育たなくなるってことか!?
逆説的だが、そういう側面がある。大人が指示を出しすぎると、脳は「自分で自分を制御する」必要がなくなってしまうからな。
指示待ちの「外発的」な集中ではなく、内側から湧き出る「内発的」な集中を育てる必要があるんだ。
なるほど。でも、あの子は宿題を全然やっていないぞ!
親が何も言わなかったら、一生消しゴムで遊んでいるんじゃないか?
そこで重要なのが、集中力という「心の筋肉」を鍛えるための環境作りだ。
まず、集中できない子には「スモールステップ」と「即時フィードバック」が有効だと言われている。
フィードバック?「よくできました」というシールを貼るとかか?
僕なら、頑張ったらパンケーキがもらえるというルールなら、死ぬ気で集中するぞ!
報酬系を刺激するのは一つの手だが、依存しすぎると「報酬がないと動かない脳」になるリスクもあるから注意が必要だ。
それよりも、フロー状態(没頭状態)を経験させることが大切なんだ。
フロー!聞いたことがあるぞ。
時間が経つのを忘れて何かに夢中になることだな!
そうだ。子どもが何かに夢中になっている時は、たとえそれが大人から見て「無意味な遊び」に見えても、決して邪魔をしてはいけない。
その没頭こそが、前頭前野を最も活性化させるトレーニングなんだ。
ううっ、地球の親たちは「いつまで遊んでるの!勉強しなさい!」って言っちゃいがちだよな。
あれは脳のトレーニングを強制終了させているようなものか。
そういうことだ。さらに、最新の論文では「身体活動」と「集中力」の密接な関係も示されている。
週に数回、心拍数が上がるような運動をさせるだけで、認知機能が向上することが分かっているんだ。
おお!「走る」「跳ねる」といった遊びも、実は脳のアップデートになっていたわけか!
よし、僕もあの子の机の前にワープして、一緒に追いかけっこをしてやろう!
待て。不審な宇宙人が現れたら、子どもの集中力は恐怖でゼロになるぞ。
まずは環境の調整だ。視界に入る場所にスマホや漫画を置かない「デジタル・デトックス」を親に推奨するのが先決だ。
確かに……。僕も調査中にチカの持ってきたパンケーキが視界に入ると、レポートのことなんて一瞬で忘れてしまうからな。
結論として、集中力がない子どもへのアプローチは、「無理やり座らせる」ことではない。
「自分で決める遊び」を保障し、没頭できる環境を整え、適度な運動を取り入れることだ。
遊び、環境、運動……全部「子どもの本能」を肯定することじゃないか!
地球人の教育は、案外「放っておく」ことが正解だったりするのか?
「放っておく」のではなく、「適切な自由を与える」という高度な関わり方が求められる。
自由な遊びの中で失敗し、工夫し、再び挑戦する。このサイクルこそが、人類の進化戦略そのものなんだから。
進化戦略……!あの子が消しゴムを分解しているのも、実は未来の宇宙船設計に向けた第一歩かもしれないわけだ。
まあ、そこまでの飛躍は期待しすぎかもしれないが、あの子の「今、この瞬間」の好奇心を大切にすることが、10年後の能力を決める土壌になるのは間違いない。
よし!僕も決めたぞ。今日はもう調査を切り上げて、全力で「自由な遊び」に取り組むことにする!
ターゲットは……あそこにあるパンケーキのデコレーションだ!
……それは単なる「食欲」の解放であって、進化戦略とは何の関係もない気がするがな。
まあいい、君の脳を少しは活性化させてくるといい。
📚 参考文献・リンク
参考文献A
Barker, J. E., Semenov, A. D., Michaelson, L., Provan, S. F., Snyder, H. R., & Munakata, Y. (2014). Less-structured time in children’s daily lives predicts self-directed executive function. Frontiers in Psychology, 5, 593.
Frontiers in Psychology
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2014.00593/full
参考文献B
Diamond, A. (2013). Executive functions.
Annual Review of Psychology64, 135–168.
https://www.annualreviews.org/doi/10.1146/annurev-psych-113011-143750