はぁ〜…。
おや、珍しいな。君がパンケーキを目の前にしてため息なんて。シロップが足りないのか?
いや、味はいつも通りなんだけどさ。なんかこう…「ワクワクしない」んだよ。
食べる前は「食べたい!」って思うんだけど、いざ食べると「ふーん」って感じで。
漫画を読んでても同じなんだ。
なるほど。それは聞き捨てならないな。
もしかすると君は「アンヘドニア(無快感症)」の状態に陥っているかもしれないぞ。
アンヘドニア? 怪獣の名前か?
いいや、これは地球の精神医学用語で、日本語では「無快感症」と呼ばれる症状だ。
簡単に言えば、「以前は楽しめていた活動に対して、喜びや興味を感じられなくなる状態」のことだよ。
喜びを感じなくなる…? まさに今の僕じゃないか!
でも、別に悲しいわけじゃないんだぞ。ただ「つまらない」んだ。
そこが重要な点だ。悲しみとは違う、「感情の平坦化」や「意欲の欠如」が特徴だ。
うつ病の中核的な症状の一つでもあるが、統合失調症や慢性的なストレス状態でも現れることが知られている。
ひえぇ…。僕の脳みそ、どうなっちゃってるんだ?
もしかして、もう二度とパンケーキを楽しめないのか!?
落ち着け。実は最近、その原因となる「脳のメカニズム」について、興味深い論文が発表されたんだ。
これを見てくれ。
『Journal of Affective Disorders』に掲載された最新の研究だ。
この研究では、アンヘドニアを持つ人々の脳内で、ある特定の接続に異常があることが示唆されている。
脳の接続? 混線してるってことか?
具体的には、「側坐核」と「視床室傍核(PVT)」という場所のつながりが、アンヘドニアの人では過剰に強まっていることが分かったんだ。
ソクザカク? シショウ…? 呪文か!? わかりやすく頼む!
「側坐核」は脳の「報酬センター」で、喜びややる気を感じる場所だ。
一方、「視床室傍核(PVT)」は、覚醒やストレス反応に関わる場所だ。
通常、楽しいことをしている時は報酬センターが活発になるが、アンヘドニアではこの二つが過剰に結びつき、
「警戒」や「ストレス」の信号が「喜び」を邪魔している可能性があるんだ。
なるほど! 本来なら「パンケーキうまい!」って感じるはずの回路に、ストレス担当の部署が
「おい!警戒しろ!休むな!」って割り込んでくる感じか!
その例えはあながち間違っていない。
脳が常に警戒モードや緊張状態にあるせいで、純粋な「快感」を処理できなくなっているわけだ。
迷惑な話だな! でも、なんでそんなことになっちゃうんだ?
僕みたいに優秀な隊長がなりやすいとか、そういう傾向はあるのか?
優秀かどうかはさておき…傾向はある。
他の研究によると、「慢性的なストレス」や「体内の炎症」が強い人ほどアンヘドニアになりやすいというデータがある。
例えば、『Molecular Psychiatry』誌の研究では、血液中の炎症マーカーが高い人ほど報酬回路のつながりが弱まり、喜びを感じにくくなると報告されている。
えっ、「炎症」って、怪我して腫れるやつだろ?
それが脳の「楽しみ」に関係あるのか?
ああ。強いストレスを受けると体は「攻撃されている」と勘違いして免疫システムを作動させる。
これが脳に作用して、「エネルギー節約のために、楽しみをカットしろ」と命令を出すんだ。
なんてこった…。
夜更かしとかストレスとか、全部つながってたのか…。
まずは「脳と体を休めて、炎症を抑えること」だ。
睡眠、ストレス源から離れる、小さな成功体験を積む…こうしたことが回復につながる。
よーし、わかった! 今日はもう仕事(調査)は中止だ!
脳の炎症を抑えるために、全力で昼寝をするぞ! イーモリ、あとは任せた!
やれやれ…。その「全力でサボる」決断力があれば、すぐに治りそうだな。
(布団の中から)おやすみ!
目覚めたら最高のパンケーキを用意しておいてくれよな!
📚 参考文献
[1] 今回のテーマとなった論文(脳の接続性について)
論文タイトル: Anhedonia is associated with higher functional connectivity between the nucleus accumbens and paraventricular nucleus of thalamus
著者: Leonard, S. J., et al.
掲載誌: Journal of Affective Disorders
発行年: 2024
APA形式: Leonard, S. J., Upshaw, V. N., & Luscher, B. (2024).
Anhedonia is associated with higher functional connectivity between the nucleus accumbens and paraventricular nucleus of thalamus.
Journal of Affective Disorders, 366, 127–134.
リンク:ScienceDirect Article
[2] アンヘドニアの定義や学習機能に関する論文
論文タイトル: Anhedonia is associated with computational impairments in reward and effort learning in young people with depression symptoms
著者: Sahni, A., et al.
掲載誌: PLOS Computational Biology (Preprint / ResearchGate)
発行年: 2025 (Preprint)
リンク:ResearchGate Article
その他参照: Wikipedia,Anhedonia, PMC – Anhedonia Concept Analysis
[3] 炎症とアンヘドニアに関する論文
論文タイトル: Inflammation linked to weakened reward circuits in depression
関連研究: Felger, J. C., et al. (2016).
Inflammation is associated with decreased functional connectivity within corticostriatal reward circuitry in depression.
Molecular Psychiatry, 21, 1358–1365.
解説記事:Technology Networks Article
リンク: PMC Article – Stress to inflammation and anhedonia