なあイーモリ!
なんだい?
ついに僕は思いついたぞ。
この地球調査を早く終わらせて、パンケーキを食べまくるための「最強のドリームチーム」の作り方を!
嫌な予感がするな…。
どうせまた、漫画の読みすぎで変な影響を受けたんだろう?
失敬な!単純明快だぞ。
IQが高くて、学歴がすごくて、ミスをしない「超エリート」だけを集めればいいんだ!
そうすれば僕は寝ていても成果が出る!完璧な作戦だ!
やれやれ…。典型的な勘違いだな。
残念ながら、個人の能力が高い人間だけを集めても、最強のチームにはならないことが証明されているぞ。
なんだって!?
全員が天才なら、結果も天才的になるはずだろ?足し算じゃないか!
地球の巨大企業Googleが数年かけて行った「プロジェクト・アリストテレス」という大規模な調査を知らないのか?
彼らは「生産性が高いチーム」の共通点を探るために、数百万ドルも投じてあらゆるデータを分析したんだ。
アリストテレス?昔の地球にそんな人間がいると聞いたことがある気がするな。で、その結果はどうだったんだ?やっぱり「リーダーのカリスマ性」とかか?
いいや、全く違った。
最も重要だったのは「誰がチームにいるか」ではなく、「チームがどのように協力しているか」だったんだ。
そして、圧倒的に重要だとされた因子が「心理的安全性(Psychological Safety)」だ。
シンリテキ・アンゼンセイ?なんだそれ?ヘルメットでも被って会議するのか?
物理的な安全じゃない。これはハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、
「チームの中で対人関係のリスクをとっても大丈夫だという信念」のことだ。
対人関係のリスク?喧嘩を売ってもいいってことか?
違う。例えば「こんな初歩的なことを聞いたら馬鹿だと思われるかな?」とか「ミスを報告したら怒られるかな?」という不安を感じずに発言できる状態のことだ。
ああ〜、あるある!僕も本部への報告でミスった時、怒られるのが怖くて黙ってたら、あとで余計に大惨事になったことが…。
まさにそれだ。恐怖や不安がある環境では、脳の扁桃体が反応し、思考力やパフォーマンスが低下する。逆に心理的安全性が高いチームでは、問題解決が早まり、イノベーションが生まれやすくなるんだ。
なるほど…。つまり「みんな仲良しクラブ」を作ればいいってことか?馴れ合いでいいなら楽勝だぞ!
それもよくある誤解だ。心理的安全性は「単に親切にすること」や「居心地の良さ」ではない。必要なのは「率直に意見を戦わせることができること」だ。
えっ、優しくするだけじゃダメなのか?難しいな…。
厳しい意見や反論を言っても、「人間関係が壊れない」という信頼があるからこそ、建設的な議論ができる。それが仕事のパフォーマンスに直結するんだ。
うぐぐ…。確かに、僕がアイデアを出した時、イーモリはいつも即座に否定してくるけど、僕らは仲が悪くなったりはしないな。
(君のアイデアは大抵危険だから止めているだけだが…)
まあ、そういうことだ。Googleの研究でも、成功しているチームには2つの特徴があったそうだ。
その特徴ってなんだ?僕のチームにも取り入れるぞ!
1つは「会話の均等性」。誰か一人が喋りすぎるのではなく、メンバー全員が同じくらいの量を発言していること。
ギクッ。僕が大体一人で喋っている会議はダメってことか…。
その通り。もう1つは「他者への心遣い(社会的感受性)」の高さだ。相手の声のトーンや表情から、感情を読み取る能力が高いメンバーが多いチームほど、パフォーマンスが高かった。
空気読めってことか!やっちまった感はいち早く察知できるぞ!
そういうことではない。相手の気持ちや状況を察知できるということだ。
最強のチームを作りたいなら、エリートを集めるよりも、「誰もが恐怖を感じずに発言できて、お互いの感情に配慮できる環境」をリーダーである君が作れるかどうかにかかっているんだ。
うーむ。天才を集めて楽しようと思ったのに、結局はリーダーである僕の「器」が試されるってことか…。
そういうことだ。今日からチカや僕の話を遮らずに、ちゃんと最後まで聞くことから始めたらどうだ?
わかったよ!よし、じゃあ今から僕の「パンケーキがいかに素晴らしいか」という話を3時間するから、イーモリもパンケーキについての意見を聞かせてくれ!
……地球人の調査に関することじゃないのか… これじゃあ「心理的安全性」以前の問題だ。