
おっ、地球人の子供がまた積み木で遊んでいるな。あんな小さな箱を積み上げたり崩したりして、何が楽しいんだか。

その「遊び」こそが、我々が調査している地球人の脳が自然進化した最大の特徴、その発達の土壌になっているんだぞ。

遊びが脳の土壌?まさか、そんな単純なことが、僕らの機械拡張に匹敵するって言うのか?

匹敵するというより、基盤を作っている。ある研究では、幼児期の「遊び方」が、10年後の空間把握能力を予測したことが分かっている。

空間把握能力…地図を読む力とか、立体的なものを頭の中でグルグル回す力だったな。

その通り、「心的回転(メンタールローテーション)」とも呼ばれる、空間能力を測る代表的な指標だ。その能力が、幼児期の遊びの傾向で決まっていたという驚きの結果だ。

どんな遊びなんだ?やっぱり、僕らの船の設計図を組み立てるような高度なシミュレーションか?

そんなこと幼児期にできるわけないだろう。レゴやブロック遊び、プラモデルの組み立て、公園の立体遊具での鬼ごっこといった、いわゆる「男の子らしい遊び」だ。

男の子らしい?ということは女の子には、空間把握能力が成長しないということかぁ?

いや、性別は関係なく。あくまで「男の子らしい遊び」をしたかどうかということだ。これらの遊びは、物を操作したり、自分の体と空間の関係を理解したりする機会を自然と提供するからだ。

ふむ…つまり、女の子がこうした遊びをする機会が少なかったことが、後に「女性は地図が苦手」という固定観念を生んだのかもしれないわけか。

その可能性が高い。能力の差は、性別による向き・不向きではなく、経験する機会の差から生まれるという示唆だ。だから、遊び方に大人が口を出すべきではない。

なるほど。遊びの多様性が、将来の知的能力の多様性につながるわけか!

その通りだ。そして、最も重要なのは、「自由な遊び」(アンストラクチャード・プレイ)なんだ。

自由な遊び?ただの暇つぶしじゃないのか?

違う。それは子どもがルールや目的を自分で決める、子どもの主導権による遊びだ。

米国小児科学会も、この遊びが認知、身体、社会性、情動の健康に不可欠だと強調している。

認知、身体、社会性、情動…全部か!マルチタスクすぎるぞ、遊び!

自分でシナリオを作り、問題を解決し、時には仲間と衝突して交渉や協調を学ぶ。これこそが、生きる上での必須スキルを身につける場だ。

自分で決めたルールの中で動くから、自尊心や自己肯定感も育まれそうだ!

良い着眼点だ。そして、さらに長期的な進化の観点もある。

進化の観点だと?地球人はもっと進化するというのか!?

ちょっとニュアンスが違うかもね。ある進化心理学の論文は、幼少期の自由な遊びの機会が多いほど、成人の「個人の適応能力」が向上するという結果を出した。

適応能力? どんな環境にも馴染めるようになるってこと?

その通り。この「適応能力」は、結果的に社会的な成功や、子孫の数(進化的適応度)にまで間接的な影響を与えていることが示唆されたんだ。

遊びが人類の生存戦略にまで関わっているとは…遊びはもはや娯楽じゃない、生存戦略だ!

まさに。また、心理学者のピーター・グレイは、「危険を伴う遊び」の重要性も指摘している。

危険!?ジャングルを探検したり、滝に打たれたりするあれか?怪我するぞ!

なんの修行だい? 漫画の読みすぎだ。怪我のない範囲での「リスクテイキング」だ。これにより、子どもたちは恐怖を克服し、リスクを評価する能力とレジリエンス(精神的回復力)を身につける。

結論として、遊びこそが、未来の学び、創造性、そして人生の困難に立ち向かうための「心の筋肉」を鍛える、脳にとっての「本気の仕事」だったってわけか!

よーし。僕も遊ぶぞー!今日は漫画とアニメをみまくるのだー!

君のは遊びではなくただの娯楽だ。そういった受動的な娯楽は脳をダメにするぞ。君こそジャングルに探検でもいったらどうだ。
参考文献(リンクおよびAPA形式)
- 空間把握能力と遊びに関する紹介記事(概要): ナゾロジーの記事は、香港大学とケンブリッジ大学の研究者が行った、幼児期の遊びの傾向と10年後の空間把握能力の関係を分析した大規模調査「ALSPAC(エイヴォン縦断親子研究)」に基づく研究を紹介しています。
概要リンク: 「女性は地図が苦手」の原因?男の子の遊びが空間把握力を高めていた – ナゾロジー / ページ2 - 自由な遊びと進化的適応に関する研究(APA形式):幼少期の自由な遊びが、成人後の適応能力や社会的な成功、そして子孫の数(進化的適応度)にまで影響を与えるという仮説を検証した研究です。
APA形式:Greve, W., Thomsen, T., & Dehio, C. (2014). Does playing pay? The fitness-effect of free play during childhood. Evolutionary Psychology, 12(2), 434–447.
論文リンク:「 Does playing pay? The fitness-effect of free play during childhood – PubMed - 遊びの重要性(AAP):米国小児科学会が、遊びが子どもの認知、身体、社会性、情動の健康に不可欠であり、親子の絆を深める理想的な機会であると強調した提言です。
APA形式:Ginsburg, K. R., & The Committee on Communications and The Committee on Psychosocial Aspects of Child and Family Health. (2007). The importance of play in promoting healthy child development and maintaining strong parent-child bonds. Pediatrics, 119(1), 182–191.
論文リンク:The Importance of Play in Promoting Healthy Child Development and Maintaining Strong Parent-Child Bonds – AAP Publications